スタートアップ経営管理の覚書

スタートアップの管理部門で働く公認会計士のブログ

急成長のスタートアップの管理部門が注意すべきこと

JA秋田おばこの巨額損失のニュースが話題になっている。 

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事務量が増えたのに電算システムが導入されず、職員数人の手作業では会計処理が追いつかなくなって、収支が把握できなくなった。その結果、正しく精算されず、累積赤字が膨らんだとみられる。 

 規模の違いはあれど、急成長するスタートアップでも、同じような事故が起こりがちである。こういった事態を避けるために、管理部門が注意すべきことをまとめる。

 

事業部門とのコミュニケーションを密に取る

もっとも大切なのは、事業部門と密接にコミュニケーションを取ることである。

刻一刻と状況が変化していくスタートアップでは、「今なにが起こっているか」を把握しておくことが重要だ。

管理部門として、情報が自分たちのところに落ちてくるのを待っているスタンスでは遅い。情報が届く頃には、とりかえしのつかない致命的な事故になっている可能性もある。

したがって、うるさがられるくらいに、自分たちから情報を取りに行く必要がある。

よくありがちなのは、チャットワークやSlackなどに「管理部門共有用」みたいなチャネルを設置して、そこに情報を流してもらうやり方だが、これだとうまくいかない。

事業部側は、わざわざそこに情報を流すほど暇ではない。

したがって、自分たちが事業部側のチャネルに入って行って、必要な情報を選別し、対応策を立案していくことが大切だ。

定例の経営会議のようなものが行われている場合には、そこにも顔を出す。チャットだけでは伝わりづらい、温度感や肌感覚を共有する。

とにかくキャッシュ・フローの動きを追いかける

 スタートアップにおいては、「急激に事業規模が拡大して業務量が増える一方だが、管理部門にはリソースがほとんど配分されない」というのが通常だと思う。

上記の事例でも、「会計処理が追いつかなくなって、収支が把握できなくなった」と記載されている。

これほどまで追い込まれている状況であれば、会計処理なんて放置しておいてよいので、とにかくキャッシュ・フローの動きを追うことだけに注力すべきである。

会計処理は後追いでもなんとかなるが、資金繰りを把握できなくなると、詰む。

きれいな帳簿はつけなくてよいので、とにかくキャッシュが回っているか、使途不明な出金はないかを日々チェックする。

もっとも、通帳の動きをベースにチェックをかけていくと、債権回収の漏れは把握できない。

立派な債権管理表を作る必要はないが、大口の顧客や、入金が遅れがちな顧客だけはリスト化してケアしておく必要がある。

入金が遅れたせいで資金ショート、という事態は絶対に避けたい。

凝ったオペレーションは構築しない

自戒を込めてでもあるのだけれど、ついつい、完成されたオペレーションの構築を目指してしまいがちだが、成長フェーズにおいては、オペレーションに凝りすぎない方がいい。

どうせ、明日には状況が変わっていて、今日作ったオペレーションでは対応できない、ということになる。

ルーティン化できるほどに事業が成熟していないときは、凝ったオペレーションはかえって運用コストが増す。多少は属人的になってしまってもいいので、スピード感を持って対応できるほうがいい。

そのためには、過度にルールを設けずに、重要なコントロールだけきちんと締める、というのがよい。

おわりに

成長中のスタートアップの管理部門は、とにかく疲弊しがちなので、早めに経営層にヘルプを出した方がいいです。気合いと根性だけでは乗り切れない・・・。