スタートアップ経営管理の覚書

スタートアップの管理部門で働く公認会計士のブログ

スタートアップでは精緻な仕組みより動く仕組みが大事

業務設計をしていると、つい精緻な仕組みを作りにいってしまいがちである。

アウトプットの品質を追求すると、ついたくさんコントロールするポイントを盛り込んでしまうが、それだと「見た目は立派」なのに「動かない仕組み」になる。

スタートアップにおいては、とにかくスピード感をもって動くことが大事なので、管理のための管理、に陥らない粒度での制度設計が大切だ。

業務設計における「あそび」の重要性

スタートアップこそ業務の標準化が重要という話を書いた。

 

shonancpa.hatenablog.jp

 

標準化というと、がちがちにマニュアル化され、逸脱を許さないようなイメージを持たれることがあるが、そういうことではない。

重要ポイントに絞って標準の手順を設計したら、それ以外のところは各人が自律的に動けるようにしておく。その自由度がすなわち「あそび」の部分になる。

「あそび」の部分があることで、メンバーの創意工夫の余地が生まれ、業務が経営者からやらされている「作業」から自ら主体的に取り組む「仕事」へと変わる。

仕組みを動かすのは、ひとりひとりの人である。なので、個々のメンバーがモチベーションを持って仕事をしないことには、仕組みは回り始めない。

管理指標を絞り込む

経営サイドが管理する指標を絞り込むのも重要である。

事業の構成要素をブレイクダウンして、それぞれの構成要素を管理していく手法は一般的になっているが、これも最初から精緻な項目を設計すると、かえって経営のスピード感を阻害することになる。

特に、事業が立ち上がって間もない頃は、なにがその事業を加速させるエンジンになっているのか、経営者自身が見えていないことが多い。

この段階で、いくつもの指標を持って経営管理をすると、「木を見て森を見ず」の状況におちいりやすい。

PDCAを速く回す、というのはよく言われることであるが、すなわち管理指標を複雑化することではない。事業の成長エンジンが何かという仮説を立てて、その仮説を立証するための指標をひとつかふたつだけ管理する。その仮説が外れたら、また次の仮説とそれに応じた指標を設計し、検証する。このサイクルを短期間で実行することが重要で、いたずらに管理指標を「横に広げる」ことではない。

おわりに

事業の初期段階は、とにかくシンプルな仕組みを作り、ガシガシ動かしていくことが重要である。事業の外部環境と、社内の仕組みを早急にフィットさせることができるかどうかが、シード期における最重要課題であり、それはビジネスサイド(顧客と自社サービスのフィット)も管理サイド(外部環境にフィットした体制構築)も同じだ。