スタートアップ経営管理の覚書

スタートアップの管理部門で働く公認会計士のブログ

管理業務をアウトソーシングするときの注意点

スタートアップ企業においては経営資源の制約から、管理面の業務についてはアウトソーシングで対応することが多い。

アウトソーシングについては、コストの変動費化、一定品質の専門サービスの享受といったメリットがある反面で、会社の成長スピードに柔軟に対応できない、社内にノウハウが蓄積しないといったデメリットもある。

今回は管理面の業務をアウトソーシングする際に、留意すべき点について考える。

業務フローの一部の切り出しにとどめる

いわゆる「丸投げ」をしない、ということ。

例えば経理業務を例にとると、日々の経費清算や証憑の収集および整理、仕訳の記帳、入出金管理、税務関係の対応、月次の決算、分析資料の作成…と様々な業務によって構成されている。

面倒臭いので全部丸投げでアウトソーシングしたい、という気持ちはわからないではないけれど、これはやめたほうがいい。

管理業務は、フロント(事業部サイド)のフローと切り離されているように思われるかもしれないが、適切な業務設計をするためにはフロントからバックオフィスまで一連の流れをきちんと繋げる必要がある。事業を深く理解していない外部業者に管理業務を丸投げすると、かえって不効率になったり、のちのち会社が拡大した時に適時適切な業務設計ができなくなったりする弊害が生じる。

そこで、全部を投げるのではなくて、全体の業務設計に与える影響が低いノンコアな作業を中心に切り出して、アウトソーシングすべきである。

経理の例で言えば、

日々の経費清算や証憑の収集および整理、仕訳の記帳

あたりが対象となる。もっとも仕訳の記帳は早い段階で内製化するのが望ましい(月次決算早期化のため)。

社内でのチェック体制は構築しておく

外注した業務については、社内でその作業結果をチェックできる体制は構築しておく必要がある。

事業部サイドの業務(たとえば開発等)を外注した場合にはチェックするのが当然だと考えている経営者は多いが、管理系だとスルーすることが傾向的に多い。内容が専門的でチェックのしようがない、という意見はあろうかと思うが、最低限、資料間の整合性や前回との比較など、基本的なチェックはすべきである。

このチェック作業を社内で行うことで、最終的な作業責任は自社にあるという意識づけにつながるし、チェックを通じた業務に関連するノウハウの蓄積にも一定程度は役に立つ。また、外部業者に対する牽制の意味でも、チェックはしっかり行い、必要な意見は伝えるべきだ。

バックアッププランは用意しておく

アウトソーシング先の事情で、急に業務が止まることがある。業務が止まる、ところまでいかなくても、アウトソーシング先に担当者が交代して著しくパフォーマンスが落ちることもある。

事業が成長局面にはいり、アクセルを踏んで一気に拡大、と目論んでいるところで外注先由来のトラブルが起こると、ほんとうにげんなりするものである。そういう時に備えて、バックアッププランを用意しておく必要がある。

同じ業務を複数の外注先に発注するのはコスト面で現実的ではないため(バックアップという意味ではこれが理想的だとは思うが。それでもフルタイム専任者を雇用するよりは安価なはずだ)、複数社に見積もりだけはとっておいて、いざという時に緊急対応してもらえるようにしておく。

内製化へのスケジュールを考えておく

現時点でアウトソーシングしている業務も、最終的には内製化していく方向で考えるべきである。

よほどの低付加価値業務以外は、インハウスでやったほうが、最終的なメリットは大きくなるはずだ。とくに大きいのが事業部サイドと管理サイドのコミュニケーション。アウトソーシングしていると、事業部サイドからの疑問質問依頼に対して、アクションがどうしても遅れることになる。そのちょっとの遅れのストレスは事業部サイドにとっては大きな負担となる。

何年後には、売上がこれくらいになったら、単月の利益がこれくらいになったら、…その条件は会社によってまちまちだと思うが、一定の指標を定めて、内製化へのスケジュールを具体的に切っておいた方がよい。

おわりに

アウトソーシングを上手に使えば、コスト削減しながら、社内メンバーを高付加価値の業務に集中できる環境を整えることができる。一方で、使い方を誤るとデメリットが大きくなるので、導入に当たっては会社の状況を踏まえて、ポイントを絞って外注すべき点が重要だ。